「今だ!」


良介が叫ぶと、こっちの世界の良介が駆け出した。


モヤなんて、怨霊なんて存在しない!


その強い意志で岩へと駆け出す。


途中でモヤにぶつかったが、それはすんなりと体をすり抜けて行った。


「いいぞ!」


「ちょっと、どういうこと!?」


大倉先生はひとりで混乱している。


モヤはもう一度人の形をつくろうとしているが、良介が「現実には存在しない」と言えば、その言葉に反応して苦しむように霧散する。


「これで終わりだ!」


こっちの世界の良介が叫び、右手に握り締めたお札を岩の割れ目に貼り付けた。


その瞬間あふれ出ていたモヤがピタリと止まった。


同時に町中に溢れていたモヤが岩の中へと吸い込まれていく。