同時に苦しみや悲しみ、無念がどっと胸の中に流れ込んできて、呼吸をすることも苦しく感じられた。


良介はきつく唇をかみ締めて耐えた。


今できるのはそれだけだった。


「死ねぇ!!」


大倉先生の叫び声。


良介は更に身を小さくして自分を守った。


このままじゃ、死んでしまう!


それでも、こっちの世界の自分だけでも守ることができれば!


自分を犠牲にしても守ろうと決意したそのときだった。


モヤの攻撃が寸前まで迫っていたはずなのに、まるでモヤが逃げるように2人から遠ざかったのだ。


悲痛な悲鳴を上げながら大倉先生の後ろへと身を隠すモヤ。


どうしたんだ?


顔を上げて確認してみると、2人の良介の前に立ちはだかる稲荷がいた。


稲荷は両腕を真横に上げて、とうせんぼするように仁王立ちしている。


「稲荷……お前……」


「私はただここに立っているだけです。神様の意思に関係なく人間を守ったわけではありません」