稲荷寺のパラレル少女

冷たい汗が額に流れて行った。


このままじゃ、殺される……!


先生には迷いが感じられなかった。


自分の祖母のため復讐することを何も感じていないようだった。


「効果がない人間が一人でもいると、この計画を邪魔するかもしれない。そう思って、時々ここであなたが来るのを待っていたのよ」


そんな……!


マスクの奥から笑い声が聞こえてくる。


このままじゃ、殺される!


きつく目を閉じたそのときだった。


カンカンカンと、非常階段を上がってくる足音が聞こえてきて先生の気がそれた。


その瞬間体を回転させ、貯水槽の奥へと走る。


心臓はバクバクと激しく脈打っていて、今にも破裂してしまいそうだ。


やがて足音は屋上で止まり、同時に「どういうこと?」


と、先生の戸惑った声が聞こえてきた。


そっと顔を出して確認してみると、屋上へあがってきたのが自分だとわかり、慌てて顔を引っ込める。


家に帰したはずなのに、どうして?


後をつけてきたのなら、もうひとりの自分に気がついてこの世界が破綻しているはずだ。


そうなっていないということは、気がつかれていないということだ。