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グリーンに塗られている非常階段を駆け上がるとモヤの色はどんどん濃さを増して行った。


「なんだこりゃ」


自分には効果がないとわかっていても手で鼻を塞いでしまうくらい充満している。


電球の光も通さないくらいの暗さだ。


「こんな状態じゃ、本当に町中をモヤが埋め尽くしちゃう!」


「そうなると、町中の人から命を狙われるってことか」


良介は舌打ちをして岩へと足を進めた。


誰がそんなたちの悪いことしているのか少しでも証拠を掴んでやるつもりだった。


この岩を砕くためには道具が必要だったはずだから、割れ目の様子からどんな道具を使ったのか特定することができるかもしれない。


とても自分ひとりの力では無理だけれど、稲荷たちの助けがあれば切り抜けることもできるかもしれない。


「モヤが濃くて確認できない」


手でモヤを払ってみてもいくらも効果はでなかった。


せめて風が吹いてくれればいいけれど、高いビルに囲まれたこの町ではそれも難しそうだ。


それならどこかで扇風機を借りてくるか。