その岩は真ん中あたりがパックリと割れてしまっている。
「あの岩、割れていなかったはずなんですが……」
稲荷が眉を寄せてそう言った次の瞬間だった。
まさに噂をしていた岩の割れ目から黒いモヤが出てきたのだ。
モヤは空中でぐるぐるととぐろを巻き、やがて人間の形になって行った。
「なんだよあれ!」
人間の何倍もありそうな人型のモヤに良介は後ずさる。
モヤの目の前にいる英也はひるむことなくその場に膝を着き、モヤを見上げた。
「今度こそ殺せ」
モヤが低い声で言った。
それは何人もの声が積み重なってひとつの声になったような、腹に響く奇妙な声色をしている。
「はい。わかりました」
英也はなにかに取り付かれているように、抑揚のない声で返事をして、うなづいた。
その時、モヤの色と英也たちの目の色が同であることに気がついて良介は息を飲んだ。
まさか、英也たちがおかしくなったのはこのモヤのせいか?
「このモヤは人を操ってるんだわ! このままじゃまた君が狙われてしまう!」
稲荷の言葉に良介は背筋が寒くなった。
さっきモヤが言った『今度こそ殺せ』は、こっちの世界の自分を殺し損ねてしまったことを指摘していたのだ。
やっぱり、ただのイジメなんかじゃなかった!
「英也がこっちに来る!」
非常階段へ向かって歩いてくる英也をやり過ごして、2人はその後を追いかけたのだった。
「あの岩、割れていなかったはずなんですが……」
稲荷が眉を寄せてそう言った次の瞬間だった。
まさに噂をしていた岩の割れ目から黒いモヤが出てきたのだ。
モヤは空中でぐるぐるととぐろを巻き、やがて人間の形になって行った。
「なんだよあれ!」
人間の何倍もありそうな人型のモヤに良介は後ずさる。
モヤの目の前にいる英也はひるむことなくその場に膝を着き、モヤを見上げた。
「今度こそ殺せ」
モヤが低い声で言った。
それは何人もの声が積み重なってひとつの声になったような、腹に響く奇妙な声色をしている。
「はい。わかりました」
英也はなにかに取り付かれているように、抑揚のない声で返事をして、うなづいた。
その時、モヤの色と英也たちの目の色が同であることに気がついて良介は息を飲んだ。
まさか、英也たちがおかしくなったのはこのモヤのせいか?
「このモヤは人を操ってるんだわ! このままじゃまた君が狙われてしまう!」
稲荷の言葉に良介は背筋が寒くなった。
さっきモヤが言った『今度こそ殺せ』は、こっちの世界の自分を殺し損ねてしまったことを指摘していたのだ。
やっぱり、ただのイジメなんかじゃなかった!
「英也がこっちに来る!」
非常階段へ向かって歩いてくる英也をやり過ごして、2人はその後を追いかけたのだった。



