稲荷寺のパラレル少女

☆☆☆

「俺はイジメられてるんだな」


学校の近くの公園のベンチに座り、良介は稲荷へ聞いた。


「えぇ……」


稲荷は気まずそうに良介から視線を外す。


まだ学校が終わっていない公園はひと気がなくて、寒々しさを感じた。


滑り台に砂場にブランコ。


誰も使っていない遊具は、自分の世界でも見覚えのあるものばかりだ。


「どうしてイジメられてるんだ?」


その質問に稲荷はうつむいたまま左右に首を振った。


「最近まで仲がよかったはずなのに、どうしてこうなったのかわからないの」


「じゃあ、稲荷が言ってた、こっちの俺がピンチっていうのはイジメのこと?」


「えぇ」


稲荷はようやく顔を上げてうなづいた。


幼い顔立ちをしているのに、やけに大人びて見えてドキッとする。


「そっか……」


良介はイジメられていた自分の姿を思い出して胸が痛くなった。


もしも自分が同じようなことをされたら?