稲荷寺のパラレル少女

そう思って落胆しかけたときだった。


「おい、放課後踏み切りに来い」


それは英也の声だった。


聞こえてきた声に良介は息を飲んでいた。


こっちの自分へ向けられたその言葉はとても冷たくて、友達へ対するものではないと瞬時に理解できたからだ。


聞いているだけでも全身に緊張が走り、拳に汗が滲んだ。


英也に声をかけられてこちらの良介はビクリと肩を震わせ、青ざめている。


「おい、返事くらいしろよ」


英也は拳で良助の肩を殴る。


良介が痛そうな表情を浮かべたが、それも意に介していない様子だ。


そんなの断っちまえよ!


怖いんだろ!?


良介は心の中でこっちの自分に話かける。


しかし、その気持ちは届くことがなかった。


「わ、わかったよ」


明らかにおびえていて顔色も悪いのに、拒否することができないのだ。


震える声で答えてうなづいている自分を見て、良介は愕然とした。