稲荷寺のパラレル少女

そっか、こっちの世界でも自分の担任の先生になってくれていたんだ。


そのことが嬉しくて、自然と笑顔になった。


「先生ばかり見ていても、解決しないわよ?」


稲荷にわき腹をつついて言われて、我に返った。


そうだった。


まずは自分を見つけて、どんな状況にいるのか把握しなきゃいけない。


それでもしばらくこっちの世界の先生に見とれてから、他の生徒たちへ視線を移動させた。


クラスの中には知らない顔も多くいたけれど、その中に自分と英也と大輝の姿を見つけることができた。


3人で固まってドッヂボールのボールから逃げているところは、変わりない。


「なんだ、別にかわったところはないじゃん」


こっちの自分はやっぱり英也と大輝の2人と一番仲がいいみたいだ。


さっきからずっと一緒に走り回っていて、何度もボールの標的にされている。


ドッヂボールは固まって逃げている生徒のほうが狙いやすいからだ。


「しっかり見て」


稲荷に言われてよく観察していると、3人の雰囲気が少しだけ違うのがわかってきた。