稲荷寺のパラレル少女

「もっと少ないよ。日本全体が少子高齢化だって言ってる」


介は社会の授業で習ったことを稲荷に聞かせた。


稲荷は真剣な表情で良介の話を聞き、「この世界も以前はそうだったの」と、うなづいた。


「その時に政府が政策を打ち出して、子供は格段に増えて行ったのよ」


だからこそ、この町は手狭になってきてしまったようだ。


縦に縦に高い建物が増えた原因のひとつだそうだ。


「原因のひとつってことは、まだなにか原因があるの?」


なにせ都心の高層マンションなんて目じゃないくらいの高さだ。


しかし稲荷は「うん、まぁ、ね」と口ごもり、視線をグラウンドへと戻してしまった。


なにか、言いにくいことを質問してしまったみたいだ。


良介はそれ以上聞くのをやめて、同じようにグラウンドへ視線を向けた。


グラウンドを見ていると50人を束ねる先生を見つけることができた。


「大倉先生だ」


思わず声のトーンがあがる。


この世界に来て初めて見知った人物を見つけた。


「あなたの担任の先生ね?」


「あぁ。とてもいい先生だよ」


どの授業でも生徒が楽しめるように考慮してくれるし、相談役にもなってくれる。


美人で人気のある先生だけどまだ未婚ということで男子たちはこぞって先生の取り合いをしているくらいだ。