ぶんぶんと、顔の前で手を振る稲荷。


しかし、その表情は引きつった笑みだ。


本当にそんなことはないんだろうな?


更に不安が膨らんできたとき、歩道が途切れて、道路になった。


「ここがあなたが通っている学校」


「ここが……」


5階建て、灰色の建物を見上げて良介は「あんまり変わらないな」と呟いた。


変わっている部分といえば、その建物の下にはまだビルが建っているというところだ。


ここの建築は一体どうなっているんだろう? と、疑問を感じずにはいられない。


元の世界の学校は3階建てでここよりは小さな建物だったが、校舎の前に広がる校庭とか校舎まで続いているコンクリートの道とか、そう言ったものは同じようだ。


校舎へ続く道の左右はちょっとした茂みになっていた。


2人は道を歩き、校門を抜けた。


「あそこにあなたがいる」


稲荷に言われて良介は木の陰に隠れながら視線を向けた。


グランドで授業を受けているクラスがあり、その数は50人は超えていそうだ。


自分を見つける前に生徒の多さに驚いた。


「これで一クラス分?」


「そうよ」


「随分と子供の数が多いんだな」


「あなたが暮らしていた世界はどう?」