その度にこの参道には今日と同じように屋台が並ぶ。


良介たちが生まれてすぐのころはイチゴ飴やたこ焼きと言ったポピュアーな商品が多かったが今はケバブ料理だったり、豚かくにまんだったりと若い人をターゲットにした屋台も増えてきた。


去年のお正月のときは射的屋さんの景品にレアカードとかが出現していた。


あれを見たときは3人とも狂喜乱舞したものだった。


「よし、じゃあ上までダッシュするか!」


体格のいい英也がニンマリと笑みを浮かべて良介と大輝を見た。


2人は目を見交わせて軽く眉を寄せる。


最上稲荷の長い長い参堂をダッシュで一気に駆け上がるのは3人の遊びのひとつだった。


一番先に黄金色に輝く仁王像までたどり着いた人がジュースをおごってもらえる決まりになっている。


けれどその遊びはイベントがない日限定で行われていた。


今日みたいに参道が人々に埋め尽くされているような日にやるなんて、思っていなかった。


いや、常識的に考えてダメだろうと良介は思う。


それがそのまま顔に出ていたようで、英也が睨みを利かせてきた。


体格がよくてこわもて顔の英也に睨まれると、たいていの同級生たちは縮み上がってしまう。


「なぁにビビってんだよ」


英也が腕組みをする。


「さすがに今日はやめておこうよ。人が多すぎるから」


答えたのは大輝だった。