稲荷寺のパラレル少女

「同じ世界?」


良介は首をかしげた。


この世界と自分の世界が同じだなんて到底思えない。


良介の疑問に答える前に、少女は大人のように肩をすくめて見せた。


「パラレルワールドはそれぞれ少しずつ違っているんだけれど、あなたが暮らす世界と、あたしが暮らしているこちらの世界は随分とズレが生じてしまっているみたい」


「そうみたいだね……」


少女の説明を聞きながら良介は眼下に見える町をもう1度見下ろした。


大きなビルとビル。


その間を縫うようにして走っている空中道路。


ときときビルから伸びるようにして公園や芝生の丘などもある。


今自分が立っている場所も、もしかしたらビルの屋上とかかもしれない。


まるでとても狭い区間に大きな町を作った結果、こうなったように見える。


こんな町、物語の中でしか見たことがなかった。


更に上を見上げてみると、まだまだ建物は上へと続いているのがわかった。


歩道橋があちこちにかかっていて、人が歩いているのも見える。


どのビルも窓から光が漏れていて、時間が気になった。


英也たちと合流したのは朝の11時ころだ。


それから1時間も経過していないはずだ。