稲荷寺のパラレル少女

どこまでもどこまでも、上にも下にも誰かの生活があるみたいだ。


あまりの高さにゴクリと唾を飲み込んで手すりから身を引いた。


「こ、ここは……」


さっきまで幽霊かもしれないと思っていた少女に、すがるように聞いた。


今頼れるのは青いワンピースの少女だけだ。


「ここはパラレルワールド。あなたが暮らしている町とは随分違うけどね」


青いワンピースを着た少女が手すりの上に立ち、言った。


「あ、危ないよ!」


良介があわてて両手を伸ばすと少女はふわりと丘の上に飛び降りた。


その様子にホッと胸を撫で下ろす。


少女は良介の様子を見て笑った。


からかわれているのだとわかり、良介は少しだけ頬を膨らませた。


それでも聞きたいことはまだ残っている。


「で、えっと。パラレル……?」


良介は首をかしげて話に戻った。


「そう。平行世界とも言われているの。さっきまであなたがいた世界と同じ世界が存在しているの」