稲荷寺のパラレル少女

なにかあれば大声を出せばすぐに大人が助けにきてくれる。


すぐ隣を歩く人が手を差し伸べてくれる。


その思いが、良介から恐怖心を奪い取っていた。


そして、鳥居をくぐった目の前に現れた光景は……。


「なんだこれぇ!?」


良介は目を見開き、大きな声を上げてその場に棒立ちになっていた。


自分はついさっきまで最上稲荷にいたはずだ。


すぐ近くに黄金色に輝く仁王像が立っていて、そこから階段を上がっていけば参拝場がある……はずだった。


しかし今良介の目の前にあるのは見たことのない町の景色だった。


町は全体的に薄暗く、目の前には最上稲荷の本殿らしきものがある。


その本殿も良介が知っているものよりも少し形が色合いが違う。


長い参道も、奥の院へと続く山道もない。