稲荷寺のパラレル少女

立ち止まっているわけにもいかず、良介はしぶしぶ歩き出す。


狭い参道を抜けても人の多さは変わらない。


少し歩きやすいと感じる程度の境内を、目の前の少女に不振なまなざしを投げかけながら歩いていく。


少女は時々立ち止まって振り向くと「こっちよ」と、良介に声をかけてまた歩き出す。


「どこへ行くの?」


「向こうよ」


「向こうって?」


良介は首をかしげる。

最上稲荷の境内は広い。


英也たちと3人で奥の院まで行ってみたことがあるけれど、あれはまるで登山だった。


登っても登ってもたどり着くことができない。


途中までは参道ダッシュと同じように走っていたが、半ばまで行かずに全員力つきてしまった。