ふと鳥居があった場所を振り返ってみると、そこにはすでになにもなかった。


もしくは、今の良介には見る必要がなくなってしまったのかもしれない。


「とにかく行こうぜ。おみくじ引きたいしさ」


「だなぁ。あ、良介靴紐ほどけてるぞ?」


大輝に指摘されて、良介は自分の足元を見た。


あの時見たのと同じ状態だ。


この状態で人並みをかきわけ、転ばずに走ったなんてありえない。


でも、ありえたんだ。


あれは現実だった。


良介は稲荷たちとの出来事を思い出し、クスッと笑ったのだった。



END