私がここにいる理由はもう何もないから。

 だから、自分の口ではっきりと言わなくちゃ。


「それで、だな……ルフィア。ルフィアに伝えたい事があるんだ」


 何故か怯えた様子で、私に手を伸ばそうとしてくるレイの瞳には緊張が宿っている。

 レイもきっとこの関係に終わりを伝えようとしている、なんてそういう風に思えた。


「この戦争が終わったら……ルフィア、君を――」

「レイ……ううん。レイバート様。私、店に戻ります。魔法も完成しましたし、私の師匠も一人で店の切り盛りは大変だと思うので。それと私との偽の婚約は、私が別の異性へ目移りしたとでも言ってくれれば大丈夫です」


 レイの言葉を最後まで聞かずに、遮るように言い放つ。

 私の最後の行動――それは、この城から出て行くこと。

 いつまでもここにいたら、好きの気持ちがまた暴れて収集が付かなくなりそうだから。

 店に戻って好きになった自分で、また一から積み上げて行きたい。

 店での生活も、人との関わりも……それに素敵な恋も。


「スキルのことについてはもう大丈夫です。神に抗う力だと、レイバート様に教わって見る目が変わったので上手く向き合えそうです。本当に色々とありがとうございました」


 私に近寄ろうとしてきたレイから一歩下がって、触れられない距離を保つ。