流れ行く景色を横目に、何故か妙に嬉しそうに笑うセドリックと共に私は豪華な馬車に揺られていた。


 長閑な田舎の風景はもう何処にもなく、見慣れない栄えた街並みに目眩がしそうになる。


 ……それもこれも、全てセドリックのせいだ。


 昨日唐突な申し出を受けたかと思えば、指定されていた時間よりも前にセドリックの屋敷の使用人が家へとやって来た。


 そのまま私の反応なんぞお構い無しに、使用人は化粧を施し髪を結い、普段ならまず着ることのないフリルがふんだんにあしらわれた慣れないドレスを無理矢理着せ、満足気な表情を浮かべていた。


 鏡に映る着替え終わった自分の姿に驚きを隠せないでいると、瞬く間にセドリックがやって来て、そのまま馬車に乗せられて……今に至る。


 仮に師匠が私の舞踏会参加を拒否して、一緒に薬草採取に連れて行ってくれれば、こんな状況にはならなかったというのに。


 悪巧みしてそうな顔で、行ってこい!と背中を押されてしまった。