城の西側に位置する兵士達の訓練所に、突然何の前触れもなく国王様がやって来たのだから無理もない。
木刀を握りしめ額に汗を滲ませながら鍛錬を重ねる騎士達は、動きを止めて私達をギョッとした目で見つめてくる。
名前を呼ばれた二人は突然の事に驚きながらも、全力疾走でこちらへやって来た。
「お呼びでしょうか!陛下!」
「訓練ご苦労。部下を集めろ。少々頼みたい事がある」
そう言って腰に下げていたポシェットから、淡いワインレッド色の液体が入った小瓶を取り出したレイは、二人にそれを渡す。
「差し入れだ。数滴垂らして水で割って飲め。安心しろ毒は入っていない」
言われるがままユートさん達はこの場にいる自分達の部下を五名程を集め、用意した水筒に瓶の液体を数滴入れて、準備は整った。
わけも分からず配られた水筒を前に困惑しごくりと唾を飲み込むけれど、レイの威圧的な空気に気圧されて兵士達はぐいっと次々と喉に流し込んでいく。



