昨日は突然誘われたから、動きやすい格好な上にオシャレなんてもの意識してなかったし。

 ……少しは可愛く見られたい、なんて思ってること口が裂けても言えないけど。

 私はただの偽物の婚約者で、レイの魔法が完成したらこの場からは立ち去る身なのに。

 彼の傍に居られる間は、彼の役に立てればいいなって考えているはずなのに……変なことばかり考えちゃう。

 溜め息を零しかけるけど、ドレッサーの前に座るよう促すユツィーにバレないようにぐっと息を飲み込んだ。


「マスターも喜ぶと思います。ここ最近注文があれこれ多いんですよ?……自分から言えばいいのに、変なところでヘタレになるんですから」


 何やらゴニョニョと言うユツィーは、座った私の髪を手際よく結っていく。

 長い髪を三つ編みし、そのまま耳の高さで一つに綺麗に纏め髪留めを差してくれた。

 そして仕上げに唇に真っ赤な紅をさして、いつもと雰囲気の違う私が鏡に映っていた。
 

 「はい出来上がりました。今日もお可愛いですよ、ルフィア様。ハイネもそう思うでしょう?」

「ガウ」

「ありがとう。ユツィー、ハイネ」


 二人のどこか嬉しそうな顔に、こちらまでも笑顔になっていると部屋の扉が叩かれた。

 慌てて椅子から立ち上がって部屋の扉を開けに向かったけれど、その前にレイが部屋の中へと入ってきた。