大理石で作られた、半円が張り出された中央部の建物。その隣には左右対称になるように同じ形の建物が続いている。
 背の高い窓がいくつも並び、柱には植物柄の装飾をつけるなど、主のこだわりが垣間見える。しかし屋敷の大半は蔦が絡まり、地面の草も好き放題に伸びていた。
 厳かというよりも寧ろ、薄気味悪い廃墟のような雰囲気が漂っている。

 さらにこの屋敷が死神屋敷と言われる所以は見た目が原因ではない。屋敷主であるラヴァループス侯爵に理由がある。
 ラヴァループス侯爵はエスラワン王国を建国した初代国王アーサー・エスラワンの時代から存在し、王家と深く関わりがあった。
 それはエスラワン王国の建国まで遡る。



 この国の土地はもともと邪悪なものたち――七つの罪源のたまる場所で、人や動物が平和に暮らせる環境ではなかったという。
 ある時、七つの罪源に蝕まれる人々の姿を見て、心を痛めた狼神が天からやってきた。彼は罪源を払い、力を使って不毛の土地を緑豊かな土地へと変えていった。しかし力を使い果たした結果、狼神は天に帰る力すらなくなってしまった。
 アーサー王は亡国の王子で民を引き連れて新天地を探し求めていた。

 そんな折、森で動けなくなっている狼神を助けたことがきっかけでこの土地を賜った。
 狼神は永遠の眠りにつく前にこう言った――我の屍の上に咲く植物をその血を以て守り花を咲かせよ。番を見つけなければこの土地の厄災は永遠に主である王家を蝕むだろう――と。