(柘榴石が警告していたのはこれだったのね)
 おもむろに胸元のペンダントへ手を伸ばすと、既に音は鳴り止んでいる。
 改めて思い返してみると最近二人の行動はおかしかった。

 エオノラがリックのもとを訪ねるとキッフェン家の執事から仕事で取り込み中だと言われて屋敷に入れてもらえなかった。それまでは必ず応接室へ通してくれていたのにだ。
 これまでとは違う態度に少し変だとは思ったが、多忙なら仕方がない。我が儘を言って執事やリックを困らせるわけにもいかないので引き下がっていた。

 丁度その頃、アリアは新しいドレスを作るからアドバイスをして欲しいと言って、頻繁にエオノラのもとを訪れていた。
 可愛い従妹の頼みなのでもちろんエオノラは快諾して彼女に似合うドレスを提案した。だが、それはリックと会うためのものだった。


(アリアが恋しているのは気づいていたけど。まさか相手がリックだったなんて)
 応援したい一身で彼女の可愛らしさを引き立てるドレスの色合いや生地を考え、提案していたのに――事実を知って愕然とする。

「ごめんなさいエオノラ。ごめんなさい……」
 祈るように手を組んで謝るアリアの声が尻すぼみになっていく。アリアは小動物のように怯え、小刻みに震えていた。
 動揺している様子から本当に何も知らないままリックのアプローチを受けて舞い上がり、好意を抱いてしまったのだろう。

 唇を噛みしめるアリアは必死に涙を堪えているようだが、とうとう嗚咽を漏らした。
(アリアを落ち着かせないと。何も知らなかったんだもの。この状況にショックを受けているわ)
 心配してアリアに近づこうとすると、リックがエオノラの前に立ちはだかった。
「エオノラ。まさかこれからアリアに酷いことをするつもりかい? それって逆恨みじゃないのか?」
「えっ?」
 エオノラは驚いて目を見開いた。