唐突な提案をされてエオノラは目を白黒させた。
(そんな方法あるのかしら?)
 芽キャベツは食べやすいよう茹でずに炒めてある。先程味見したが白ワインが良い味を出していた。これ以上、料理に手を加える必要はない。
(もしできることがあるとするなら、あれくらいしか思いつかない)
 あれを想像した途端に心臓の鼓動が加速する。とても緊張するし、恥ずかしくて涙目になった。
(でも、クリス様には食べてもらいたいもの!)
 決意を固めたエオノラは、フォークへ手を伸ばした。


「クリス様……あ」
「?」
「あーん?」
 顔を真っ赤にしながら、フォークに刺した芽キャベツをクリスの口元へ運ぶ。
 緊張からかフォークを持っている手が震えた。

「おい」
「は、はい」
 流石にこんな行動を取ったのはやり過ぎだろうか。クリスがどんな顔をしているのか確認する勇気がなくて、視線を逸らす。
(やっぱりするんじゃなかったわ)
 とうとう我慢できなくなったエオノラは手を引っ込めようとする。だが、クリスに手首を掴まれた。
 エオノラがびっくりしている間に、クリスはエオノラの手を自身へと引き寄せる。そして、ぱくりと芽キャベツを食べた。

「……そういうのは、私以外の人間に間違ってもするんじゃない。分かったか?」
 芽キャベツを食べた後、クリスはこちらに顔を背けながら言う。
 恐らく、強制は良くないと注意してくれているのだろう。
 クリスの言い分は尤もだ。エオノラはしゅんとする。
「申し訳ございません。もうしませんから」