気まずい中で最後まで料理を作ったエオノラは、皿に盛り付ける。教えて貰った料理は、本当なら様々な野菜と鶏肉を白ワインで炒めたものだったのだが、芽キャベツと鶏肉の白ワイン炒めになってしまった。
 ブレッドピンの中にあったパンも添えて、テーブルに置く。
 クリスはイヤイヤながらも席に着き、じっと皿の中を見つめた。

「クリス様が嫌いなのは分かりますが、旬の野菜を食べるのは身体に良いとジョンが……あ、ジョンというのは私の屋敷の執事なのですが、言っていました」
「……」
 じっと芽キャベツを睨め付けるクリス。
(やっぱり芽キャベツは取り除いて、鶏肉だけにした方がいいかしら)
 嫌いな食べ物をこれでもかと入れられた料理を出されて喜ぶ人間はいない。

 食材がなかったにせよ、もう少し配慮すべきだったとエオノラは反省した。
「申し訳ございません。芽キャベツをフライパンに戻してきます」
 エオノラが皿に手を伸ばそうとすると、クリスがひょいと取り上げた。
「悪いのはハリーだ。あなたは何も悪くない。……だからこれはきちんと食べる。せっかく作ってくれたんだから」
 クリスは皿をテーブルに置き、横に置いてあったフォークを手にする。
 しかし、いつまで経ってもフォークを握った手が料理に伸びることはなかった。

「クリス様、やせ我慢しなくても」
「していない」
「でも」
「それならエオノラ。どうやったら私が芽キャベツを食べたくなるか一緒に考えてくれ」
 クリスはそう言ってテーブルにフォークを置く。