エオノラは今まで散々アリアの面倒を見てきたが、彼女の考え方が自分の常識の範疇を超えていると知ってしまったため、交流することを避けている。
(私が頑張ったところで、もう私の手には負えないもの……)


 エオノラがそこでふうっと一息吐いていると、突然手にしていた銀盆が軽くなった。
「お茶を淹れてくれてありがとう。後は私が四阿まで運ぼう」
 屈託のない笑みを浮かべたフェリクスが現れてティーセットを運んでくれる。
 四阿に到着した二人は早速これまでと同じようにお茶を飲み始めた。
「……今日はここに来てくれてありがとう」
「いいえ、公務でお忙しい中、お茶に誘ってくださってありがとうございます。手紙に書いてあった通り、どのバラも見頃を迎えていてとっても綺麗です」
 エオノラはお茶を啜りながら、フェリクスが作り上げた美しい庭園を眺めて幸せな一時に浸る。