フェリクスを見た令嬢たちはほうっと溜め息が漏らし、頬を上気させて蕩けるような表情を浮かべていた。
「嗚呼、三人の王子の中で一番フェリクス殿下が素敵ではありませんこと?」
「少しで良いからお話しできないかしら?」
「わたくし、絶対彼とダンスを踊りたいですわ」
 周囲からはなんとしてもフェリクスとお近づきになりたい令嬢たちの声が聞こえてくる。

 華やかな王族の一行が壇上に上がってそれぞれ用意された椅子に座ると、国王陛下だけが椅子に座らずに貴族たちの前に立ち、祝杯を挙げる。
 それと同時にオーケストラが演奏を開始して、宴が始まった。
 フェリクスは椅子から立つと壇上を降りて貴族たちに挨拶をし始めた。早速お近づきになりたい貴族たちが老若男女問わず彼の周りにやって来て人だかりができる。
 エオノラもその人だかりの方へと足を運んでみたが、こんな状況で近づくのは難しそうだ。

 仕方がなく遠巻きから姿を眺めていると、後ろから肩を叩かれた。ゼレクが呼びに来たのだと思い頭を動かすと、そこには田舎領へ飛ばされたはずのリックが立っていた。