「……なら、俺がもう一肌脱ぐとしよう」
「えっ!?」
ハリーの発言にエオノラはギョッとした。まさか、ハリーがダンスの相手をしてくれるのだろうか。しかし、もしもデビュタントの相手がハリーとなれば、それだけでエオノラとダンスを踊る相手は敷居が高くなるし、今度はハリーと恋仲なのではないかという噂が立ってしまう。
不安な表情が顔に出てしまっていたのかハリーはすぐに補足した。
「誤解がないよう説明しておくと、ダンスの相手をするわけじゃない。……まあ、大船に乗ったつもりで俺に任せるといいさ」
「は、はあ……」
ハリーは片目を瞑ると、颯爽と国王夫妻がいる壇上へと歩いて行った。
慌てて彼の後を追うが、彼との距離はどんどん離れていってしまう。
エオノラが追いかけている間にハリーは壇上に到着すると、国王夫妻に挨拶をした。
「父上、母上。このような華やかな公の場でお会いするのはお久しぶりでございます」
「ハリストン、あなたが夜会に現れるなんて珍しいわね。いつもは研究所に引き籠もっているというのに」
王妃は挨拶をしにきたハリーに優しく微笑み掛けながらもちくりと苦言を呈する。しかし、どこ吹く風のハリーは気にしていない様子だった。寧ろ満面の笑みで言葉を返す。