「へ? わっ!? ク、リス様……!?」
起き抜けの頭はぼんやりとしていて、状況を呑み込めきれない。
徐々に霧が晴れるように思考がはっきりしてくると、エオノラは自分の置かれた状況を理解して声なき悲鳴を上げた。
離れようと身じろいだが、クリスの腕に力が込められてびくともしない。
「……あのぅ、もう大丈夫なので離していただけますか?」
「断る」
即答されてエオノラは言葉に詰まった。
戸惑っているとクリスが訥々と答えてくれる。
「……泣き腫らした、酷い顔を見られてもいいのなら、別に構わないが?」
「それは、嫌です!」
今度はエオノラが即答した。
他人に見せられる顔でないことは想像に難くない。両瞼は蜂に刺されたみたいに腫れて鼻も真っ赤になっているだろう。
「ならこのまま我慢して」
「……は、い」
これは彼なりの気遣いなのだろうが、この体勢でいることに緊張を覚える。
(ううっ、この状況はどうしたって密着し過ぎよ! 心臓の音とか聞こえてないかしら?)
変に意識してしまい、全身が急速に熱くなる。それに伴い心臓の鼓動も速くなっていく。