エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

「そういう目を背けたくなることから逃げないで、むしろ正面から受け止めて人を救う職を選択するって……やっぱりすごい。私にはできなかったから」

 人は、自分にないものを持っている相手に心酔するものなのかもしれない。
 だけどやっぱり、私は文くんだから好きになったって思ってる。

「あの時も、救ってくれたのは文くんだったね」
「俺はなにも」
「だから私は――文くんはとても大切な人で、文くんを応援してるし評価されると自分のことのようにうれしいし……尊敬してる」

 ずっと抱えてきた想いを伝えるって、勇気がいったけど伝えた後はとても清々しい。

 私は『素直に』とアドバイスをくれた真美ちゃんに感謝する。

「なんか……照れるな。いやでも、うん。ありがとう」

 文くんがようやく表情が柔らかくなったのを見て、私も笑みが零れる。

「小さい時は私がひとり占めしてたけど、今はもう文くんはたくさんの人の『主治医』だもんね。自慢だよ」
「主治医? あ~。ミイが子どもの頃言ってたやつか。あれ、責任重大だったんだぞ。ミイの信頼が大きすぎて」
「ごめんなさい。だけど、あの頃は文くんに手を繋いでもらっただけで、本当に症状が軽くなった気がしてたの」

 穏やかな雰囲気の中、私は再び口を開いた。

「本当、文くんは昔から相手思いで優しい。ただね。一緒に過ごすようになって文くんが頑張ってるのを間近で見て、心配もしてるよ。誰かを助けることばかりになって身を削りすぎじゃないかなって」

 聞いてはいたけれど、勤務医の激務を目の当たりにしてからというもの、私はそこが引っかかっていた。

 今はまだ若くて体力もあって頑張れても……ううん。いつの時代だって、年齢は関係なく、無理が祟ると老若男女問わず突然なにが起こるかわからない。