エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 サンドイッチ屋さんは、知る人ぞ知る的なこぢんまりした店で、周りの民家に馴染みすぎていて初めて利用する人は店を探すかもしれない。

 コーヒーもテイクアウトしていたから、私たちはホットコーヒーも注文して庭園へと向かっていた。おそらく五分ちょっと歩けば到着する距離。

 外は予報通りの気温で、降り注ぐ陽射しがとても心地いい。

 ふわふわした気持ちで歩いていたら、ふいに腕を掴んで引き寄せられた。びっくりして文くんを見上げれば、彼は後方を気にしている。
 私もつられて振り返ると、小学生が自転車で並走してこちらへ向かって来ていた。

「あ、ありがとう」
「ミイ、こっち」

 彼は私を歩道の端へと移動させた。私がぼんやりしていたから危ないと思って場所を変えたんだと思うと、自分が子どもみたいで申し訳なくなった。

 やっぱり文くんにとって、私は面倒をみなきゃならない子、みたいな感じなのかも。
 そんな思いを巡らせている間に、目的地に到着する。

 入園料を支払って庭園内へ歩みを進めてすぐ、色付き始めた紅葉が出迎えてくれた。

「そっか。紅葉の季節だ」
「今年は少し早いのかもな」

 無意識に木々を仰ぎ見て歩いていたら、隣の女性と肩が軽くぶつかった。互いに「すみません」と謝って、トラブルにならずにほっとした直後、文くんに手を繋がれる。

「やっぱり、さっき繋いでおくんだった」

 苦笑意を浮かべて言われ、羞恥心と高揚感とで頬が熱くなっていく。

 大人になって手を繋ぐのは、これで二度目。

 理由は前回同様、私が危なっかしいからだって理解してる。
 それでも伝わってくる体温は変わらないから、私はどうしてもドキドキしちゃうのだ。

 それから大きな池に架かった橋を渡り、石畳になった坂道を上った先で東屋があったので、そこで昼食がてら休憩することにした。

 サンドイッチはバケットの表面がカリッとして中はもっちりしていて、とても食べ応えがあった。挟んである野菜なども新鮮で、ドレッシングもすごく合っていて、文くんがオススメだというのも頷けた。

 さらに恵まれた天気の中、自然を感じつつ戴いているのがなによりも最高。

 ……ううん。多分、なにを食べようと雨だろうとどこだろうと、文くんといられる時間は全部、私にとって特別な瞬間になるんだ。

「想像以上にいいな。人が多くても敷地が広いし、案外ゆっくり過ごせる。近いのに、来たことなかった」
「そうなの? 文くん、職場もこの辺りなんだよね?」
「そう。でもここは帰宅ルートからは外れるから、わざわざ来ない」
「そっか。そうだよね」

 私は呟いて、なにげなく空を仰ぎ見た。瞼を下ろし、自然の匂いをすうっと吸い込んで、ゆっくり視界を広げていく。