エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 誰でも受け入れたわけじゃないと言われただけで、私の恋心が報われた気さえした。

「……そうかな。きっと文くんなら、知らない人じゃない限り力になってくれてたと思う。昔から子ども扱いせずに私の気持ちを尊重してくれたり、本当に優しいもん。私こそ……誰でもよかったわけじゃない。文くん以外の人は考えられない」

 懸命に笑顔を作って文くんを見ると、こちらを見つめたまま静止していた。

 そんな私たちのもとに、ひとりの女性がやってくる。

「失礼します。こちらコーヒーの試飲です~。よかったらどうぞ」

 空気を一変させる明るい声に戸惑っていると、文くんが先に反応した。

「ありがとうございます」

 私も続けて会釈だけして、小さな紙コップを受け取った。

 店員の女性が隣のテーブルへ移動した後、再び沈黙が訪れる。
 気まずい思いで視線を泳がせていたら、ふいに窓の向こう側の看板が目に飛び込んできた。

「あ、文くん見て。あそこにジグソーパズル専門店ってある」
「ああ、そういえば」
「ね、ここ出たら行ってみようよ。文くん、パズル好きなんでしょ? 私いろいろお世話になってるからお礼にプレゼントするよ! あっ……でも忙しくパズルしてる暇もないのかな」
「……いや。気に入ったものがあれば、いつも先に買って置いておくんだ」
「じゃあ!」

 私が勇んで前のめりになると同時に、テーブルの上に置いていた手にコツン、となにかが触れた。カップとは違う感触に、なにげなく手元を確かめる。

「え?」

 テーブルに置いてあるのは、ラッピングされている立方体の箱。

 私はシルバーの包装紙に包まれた箱を凝視する。