エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

「おんなじだな、あの子と」
「え?」

 くすくす笑う文くんが視線で示す方向を見て見れば、小学一年生くらいの男の子が二、三歳の女の子の手を繋いで面倒をみている。

 私はカアッと顔が熱くなった。

「確かに、状況はそうだけど……そこまで子ども扱いしなくたって」

 口を尖らせて不満を漏らすと、文くんは私の顔を覗き込んだ。
 彼の端正な顔が間近にあってどぎまぎする。

「嘘。子どもだなんて思ってない。むしろ逆だ」

 ぽつりと言った後、彼はまた前を向いてしまった。しかし、今言われた言葉が気になって、広い背中に問いかける。

「逆……?って」

 文くんは私の声が聞こえなかったのかなにも言わず、手を引いて歩き出す。

 私は繋がれている手を見て、胸がしめつけられた。

 昔もこんなふうに何度も手を繋いだ。
 あの頃も文くんの手は大きいな、温かいなって思っていた。

 大人になった現在、彼の手はやっぱり私の手を包み込んでしまうくらい大きい。その感覚は小さい時と変わらないはずなのに、どうしてこんなに胸が騒いでうるさいの。

 まともに顔を上げられない。全神経が左手に集中してる。
 まるで触れられているところが激しい脈を打ってる感覚にさえなってる。

 気づけば百貨店を出て、もうコーヒーショップは目の前。なにげなく看板を見上げ、思わず声を上げた。

「あっ。このコーヒーショップ!」

 英字のショップ名を外壁にプリントしている。どこか柔らかなフォントで、安らげるような印象を受ける。
 イーゼルに乗せてあるメニューボードも、スタッフの手書きなのか今日の天気やオススメのコーヒー豆など書かれていてほっこりした。

「知ってた?」
「うん。ネットで話題になってた。興味あったの。わあ、オシャレ~。ここに店舗あったんだ」

 スタイリッシュな外観を長め、大きなガラス越しに店内にも視線を移す。

 パッと見、カウンター席とテーブル席が数席あって、お客さんが楽しそうに談笑していた。
 レジカウンターでオーダーして、隣のカウンターで受け取る仕組み。