「あ、文くん。電話済んだの?」
「うん」
彼は私の手元をジッと見る。はっとして、商品を陳列棚に戻した。
「あ、これはたまたま……」
「俺、オーダーしてたワイシャツ受け取るだけだから、ここで待ってて。気になるものあるんだろ? 気にしないでいいから」
「え、でも……。うん、わかった」
文くんは微笑んでショップを出て、エスカレーターに乗っていく。
ワイシャツを受け取るだけでもなんでも、一緒に行きたかった。……なんて、そういうの重いよね。大体彼女でもないのに、四六時中ついて回られたら疲れるだろうし。
またしても彼との距離を思い知らされ、暗い気持ちをどうにか切り替えようとしていたら、隣のスタッフが口を開く。
「素敵な方ですね。背もあってスタイルよくて。お客様と並んでるところを見たら、身長差にきゅんとしちゃいました」
「や……。確かに彼は大人で素敵とは思いますが、私は……」
今日で二十四歳になったのに、中身はきっとまだ全然幼くて。なんなら、容姿だって文くんに釣り合うような感じじゃない。
思考が自虐気味になっていき、視線を落とす。
「コンプレックスはほとんどの女性が持ってますよ。私もです」
ふいにスタッフが真剣な面持ちで返してきて、私は目を丸くした。
「え? すごく美人ですらっとしてて、とても魅力的なのに……」
彼女は私の憧れがたくさん詰まってる、そんな女性だった。
百六十五センチくらいのほどよい身長と、白く透き通った肌に、知性が溢れる目鼻立ち。いわゆる、仕事ができる女性というイメージを受ける人。
茫然と彼女を見つめていたら、苦笑交じりに返された。
「きつく見える奥二重とか、短い睫毛とか、くせ毛とか……もうたくさんあります」
奥二重に睫毛……? 全然気にならない。くせ毛っていうのも、それを活かしてなのか、だらしなく見えないラインで崩したまとめ髪がすごくオシャレに見える。
「そう、なんですか……意外ですね」
「付け睫毛やメイクを駆使してます。案外、他人は気にしてないってわかってはいるんですけどね。それでも自分が気になっちゃうものですよね」
彼女は長い睫毛を伏せて柔らかく微笑んでいる。
なんでも持っていそうに見えて人それぞれ悩みはあって、努力してるんだよね……。
感慨深くなっていたら、彼女がパッと明るい笑顔を向けてきた。
「よければ少し私にお手伝いさせていただけませんか?」
「うん」
彼は私の手元をジッと見る。はっとして、商品を陳列棚に戻した。
「あ、これはたまたま……」
「俺、オーダーしてたワイシャツ受け取るだけだから、ここで待ってて。気になるものあるんだろ? 気にしないでいいから」
「え、でも……。うん、わかった」
文くんは微笑んでショップを出て、エスカレーターに乗っていく。
ワイシャツを受け取るだけでもなんでも、一緒に行きたかった。……なんて、そういうの重いよね。大体彼女でもないのに、四六時中ついて回られたら疲れるだろうし。
またしても彼との距離を思い知らされ、暗い気持ちをどうにか切り替えようとしていたら、隣のスタッフが口を開く。
「素敵な方ですね。背もあってスタイルよくて。お客様と並んでるところを見たら、身長差にきゅんとしちゃいました」
「や……。確かに彼は大人で素敵とは思いますが、私は……」
今日で二十四歳になったのに、中身はきっとまだ全然幼くて。なんなら、容姿だって文くんに釣り合うような感じじゃない。
思考が自虐気味になっていき、視線を落とす。
「コンプレックスはほとんどの女性が持ってますよ。私もです」
ふいにスタッフが真剣な面持ちで返してきて、私は目を丸くした。
「え? すごく美人ですらっとしてて、とても魅力的なのに……」
彼女は私の憧れがたくさん詰まってる、そんな女性だった。
百六十五センチくらいのほどよい身長と、白く透き通った肌に、知性が溢れる目鼻立ち。いわゆる、仕事ができる女性というイメージを受ける人。
茫然と彼女を見つめていたら、苦笑交じりに返された。
「きつく見える奥二重とか、短い睫毛とか、くせ毛とか……もうたくさんあります」
奥二重に睫毛……? 全然気にならない。くせ毛っていうのも、それを活かしてなのか、だらしなく見えないラインで崩したまとめ髪がすごくオシャレに見える。
「そう、なんですか……意外ですね」
「付け睫毛やメイクを駆使してます。案外、他人は気にしてないってわかってはいるんですけどね。それでも自分が気になっちゃうものですよね」
彼女は長い睫毛を伏せて柔らかく微笑んでいる。
なんでも持っていそうに見えて人それぞれ悩みはあって、努力してるんだよね……。
感慨深くなっていたら、彼女がパッと明るい笑顔を向けてきた。
「よければ少し私にお手伝いさせていただけませんか?」



