エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 車で移動すること約十五分。とある一軒のオシャレなレストランに到着する。

 ビルの一階に入ってるそのお店は、見た目からスタイリッシュ。看板や照明、メニューボードなどシックで目を引かれる。

 店内に入ると、女性スタッフが応対してくれる。直後、パントリーから細身の男性が現れた。

「おー、文尚。本当に帰ってきたんだ」
「うん。公孝(きみたか)も変わってないな。店も変わらず繁盛してるし」
「おかげさまでな。お。その子が例の?」

 公孝と呼ばれた彼が、ふいに私を見た。

 例のって……文くん、私のことどう説明したんだろう。まさかお互いの親に付き合ってるって嘘ついて一緒にいるとか言ってないよね……?

 ハラハラして文くんの隣で軽く頭を下げる。

「ああ。それより、調理場出てきて大丈夫なのか?」
「あ! やべっ。まーゆっくりしてってよ。今日は奥のテーブル取っておいてあるからさ」
「わかった。ありがとう」

 公孝さんは慌ててパントリーへ入っていく。私たちは女性スタッフに案内され、席に着いた。

「おしゃれだし、すごく人気あるんだね。店内にお客さんがいっぱい。あの公孝さんってお友達がひとりで料理してるの?」
「いや。最近はさすがにバイト増やしたって聞いた。公孝は医者も向いてたと思うけどああいう表情見たら……あいつの選択は正しかったって思うよ」
「あ……。お医者さんになるかもしれなかったんだ。そっかあ」

 大学の時の友達ってことかな。医大から調理師へ舵を切るって並大抵の覚悟じゃできないよね。

 こうして夢を叶えて生き生きとしてる姿を見ると、今の自分は過去の自分が頑張って手に入れた場所なんだって感じて尊敬する。

 調理場へ意識を向けていると、指先になにかが当たって顔を戻す。

「はい。ミイの好きなの頼んで」
「あ、うん。ありがとう」

 文くんが渡してくれたメニュー表を開く。