「驚かせてすみません」
「本当ね。驚いたなんてものじゃないわ。その……いつから?」
「この間会った日がきっかけで……。挨拶はこちらから先に動くべきでした。申し訳ありません」
文くんはまったく狼狽えることなく、スラスラと母の質問に対応する。
私なんて今日までしどろもどろになるばかりで、文くんみたいに笑顔で余裕のある回答はできなかった。
思い出せば、文くんは昔から常に冷静で頼りがいのある人だった。
なにかトラブルが起きるたび、慌ててしまう私を落ち着かせ、慌てず状況に最適な対処を考え、遂行する。
トラブルといっても私が幼少期の頃のものだから、大事なものを落としたとか怪我をしたとかそういう内容だけれど。
幼心に、文くんは信頼できるカッコいいお兄ちゃんだと思い続けていた。
その憧れの感情が、思春期を迎えた辺りで恋心に変化していると自負していたものの、当時中学生の私と成人を過ぎた文くんではなにか進展する可能性などゼロだったから。
「細かいことはいいの。事情を知らないから、急かしてごめんなさい。澪が言ってくれてたらここまで強引な真似までしなかったのに」
母に視線を向けられ、咄嗟に首を竦めて俯いた。
「ミイは多分、俺が伺いやすいよう当日まで伏せてくれてたのかもしれません」
文くんは横から優しくフォローをしてくれる。
ちらりと彼の方を見たら「ね?」と微笑まれ、ドキッとした。
「なるほどねえ。文くんと交際を始めてまだひと月も経ってないなら、澪が言い出せなかったのも頷けるわ。私の質問に挙動不審にもなるわねえ」
よくわからないけど母がこれまでの私の反応に納得してる。
この調子でいけば嘘だって全然気づかれなそう。
密かに胸を撫で下ろし、改めて文くんってすごいなと尊敬の眼差しを送る。
刹那、彼としっかり目が合った。
彼はほんの一瞬だったが私に柔らかな表情を見せ、再び母と雑談を続けていた。
「本当ね。驚いたなんてものじゃないわ。その……いつから?」
「この間会った日がきっかけで……。挨拶はこちらから先に動くべきでした。申し訳ありません」
文くんはまったく狼狽えることなく、スラスラと母の質問に対応する。
私なんて今日までしどろもどろになるばかりで、文くんみたいに笑顔で余裕のある回答はできなかった。
思い出せば、文くんは昔から常に冷静で頼りがいのある人だった。
なにかトラブルが起きるたび、慌ててしまう私を落ち着かせ、慌てず状況に最適な対処を考え、遂行する。
トラブルといっても私が幼少期の頃のものだから、大事なものを落としたとか怪我をしたとかそういう内容だけれど。
幼心に、文くんは信頼できるカッコいいお兄ちゃんだと思い続けていた。
その憧れの感情が、思春期を迎えた辺りで恋心に変化していると自負していたものの、当時中学生の私と成人を過ぎた文くんではなにか進展する可能性などゼロだったから。
「細かいことはいいの。事情を知らないから、急かしてごめんなさい。澪が言ってくれてたらここまで強引な真似までしなかったのに」
母に視線を向けられ、咄嗟に首を竦めて俯いた。
「ミイは多分、俺が伺いやすいよう当日まで伏せてくれてたのかもしれません」
文くんは横から優しくフォローをしてくれる。
ちらりと彼の方を見たら「ね?」と微笑まれ、ドキッとした。
「なるほどねえ。文くんと交際を始めてまだひと月も経ってないなら、澪が言い出せなかったのも頷けるわ。私の質問に挙動不審にもなるわねえ」
よくわからないけど母がこれまでの私の反応に納得してる。
この調子でいけば嘘だって全然気づかれなそう。
密かに胸を撫で下ろし、改めて文くんってすごいなと尊敬の眼差しを送る。
刹那、彼としっかり目が合った。
彼はほんの一瞬だったが私に柔らかな表情を見せ、再び母と雑談を続けていた。



