エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 この部屋は、私の仕事部屋。

 天井まである背の高い本棚にはたくさんの本。
 そして、壁には額縁に入れて飾ってあるパズルがいくつか。

 私はパズルを順に眺めて行き、一番目立つ場所に飾ってあるパズルで視線を留めた。

 それは、昔文くんと一緒に選んだ彩雲のパズル。

 うっかりパズルを眺めて思い出に耽っていたら、ガタッと音がして我に返る。
 慌てて那智を見ると、いつの間にか中央のテーブルにつかまり立ちをしていた。

「あ、触っちゃダメよ。間違って喉に詰まったら大変」

 テーブルには作りかけの新しいパズル。
 私は那智を抱っこして、テーブルの上を見せる。

「これはパパの楽しみだからね。大事にしようね」

 当然、まだ幼い那智には伝わっていないみたいで、抱っこしていてもなおパズルのピースへ手を伸ばす。
 どうにかあやしてごまかしつつ、改めてきちんとパズルを見た。

 数日前から、ほんの少しだけ進んでる気がする。
 文くんは仕事が多忙な上、私の手伝いもしてくれてる。それでもちょっとずつ、こうしてパズルも完成に近づいているのを見て感謝の思いが溢れた。

 私はひとつのピースを摘まみ、パチッとはめる。
 偶然にもすぐ、当てはまる箇所がわかってうれしくなった。

 未完成のパズルピースをひとつずつクリアしていく。
 それはなんだか、私たち夫婦や家族にも通ずるものがある気がする。

 未完成なのを嘆くより、大切な人と補い合って、一緒に考えた未来へ向かって一歩ずつピースをはめていく。

 そうしたら、私たちは何度でもあの彩雲みたいなキラキラした景色に出会えるのかもしれない。
 




                                   おわり