エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

「ミイちゃん」
「ん?」
「話してくれて、うれしかった」

 彼女はさっきまでの朗らかな雰囲気からちょっと変わって、真剣な目でそう言った。

 真美ちゃんが言う『話』とは、私の疾患のこと。

 文くんと私の気持ちが固まって治療方針も定まった後、真美ちゃんに話してみようかなと思った。

 こういうデリケートな内容は、たとえ肉親であっても話しづらいものだとは思う。
 でも私の場合、ひとりで抱え込むと悪い方へ考えるって十二月のあの時にわかったし、彼女は文くんのお姉さんという前に、自分の姉みたいな感覚が強いから。

 しょっちゅう連絡を取っていたわけでもないけれど、会えば楽しくてすごく話しやすく安心感をくれる人だ。

 親よりも当然年齢もいろんな価値観も近いし、ここまでプライベートに踏み込んだ話を言えるほど親しい友人もいないからって決断したのはいいけれど……。

「本当は、今も時々思うの。自分の気持ちを軽くするために話しただけなんじゃないかって。そのせいで、周りの方が気を遣わなきゃならなくなるのに」

 私は視線を落として小さな声で答えた。
 後々、ふとした瞬間、自分のエゴで彼女に重荷を共有させてしまったのでは……と。

 気まずい気持ちを抱いていたら、真美ちゃんが明るく笑い飛ばす。

「いいじゃない。どう感じてどう考えるかは人それぞれだけど、私は一緒に悩ませてくれるって、より深い関係に一歩近づく気がする。信頼関係を築くのって、少なからずそうやって自分の心を開かなきゃできないと思う」

 真美ちゃんは凛と瞳を輝かせてそう言った。

「まあ私は婦人科は専門外だけど知り合いはいるし。なにより、私も医者だから守秘義務はきちんと守るよ~。安心して。文尚にだって言わないから」

 そして、ニッコリ顔で私の頬をつつく。

「なにより、溜め込むのはよくない。肌の調子も悪くなるからね」
「ふふ。わかった。気を付ける。ありがとう」

 ふたりで笑い合って和やかな空気でいたら、リビングのドアが開いた。