エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

『20』……『21』『22』……『23』――。

 それぞれ、文くんからどんなメッセージがきたとか、話をしたとか思い返しながらお菓子を手のひらに乗せていく。

 そして『24』……今日の日付。
 アドベントカレンダー最後の引き出し。

 これを開けて、お菓子を全部食べて、笑って前に進む。

 大丈夫。甘いお菓子はいつでも元気をくれるはずだから。

 きゅっと唇を引き結び、引き出しに指を掛ける。ゆっくり引いて中身を確認するや否や、私は目を剥いた。

 その時、インターホンが鳴った。

 茫然としていた私は、インターホンの音は聞こえてはいたものの動けなかった。
 その間に、もう一度インターホンが押される。

 結局応対せずに立ち尽くしていたら、今度はスマートフォンが鳴り始めた。
 デスクの上のスマートフォンに目を向け、そっと手に取る。少し迷って応答した。

「……文くん」
《今、どこ? 家に来たけど留守だったから》
「えっ」

 私は思わず声を上げ、すぐさま窓際へ移動する。窓を開け、身を乗り出す勢いで玄関を見下ろした。

「ふ、文くんだったの?」

 見れば、本当に玄関前に文くんが立っている。

《事前に連絡したら、澪はまた余計なこと考えると思って》
「ま、待って……今下りる」

 愕然としながらも、手を握り締めて階段を駆け下りる。ドアを勢いよくガチャッと開けたら、文くんが微かに白い息を吐きながら待っていた。

 玄関先に出て彼と視線がぶつかった瞬間、時間が止まったみたいになってなにも言えなかった。

 固まっている私に文くんの方から歩み寄ってきて、カバンから取り出した分厚いファイルを見せられる。

「半日程度だと、まだこれしか資料は集められなかったけど」
「え……なに……?」

 まったく予想がつかなくて首を傾げる。

「澪が抱えてるハンデに対する治療方法や方針……片っ端から情報を集めようと思って。澪の検査をしてくれたドクターにも色々教えてもらった」

 彼の言葉に目を見開いた。

 このファイルすべて……昨日あの後からずっと……?

 文くんはファイルをカバンに戻して睫毛を伏せて言う。