エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 グッと奥歯を噛みしめ、掛け布団を握り締める。

 そうやって自分の感情を中心にしか考えられない今の私にも、苛立ちを覚える。

 もっと、私のことばかりじゃなくて、ちゃんと考えなければいけない。

 文くんの気持ち――。
 文くんは優しいから、絶対に私に寄り添おうとしてくれる。

 だから、というより、私は自分の気持ちがまだ整理できていないのが大きな理由で、彼へは検査結果について『今日の段階では特に問題はなかった』と嘘をついていた。

 文くんの傷ついた顔を見たくなかった。

 彼に寄り掛かり続けるのは楽だ。だけど、この先まだ長い人生を、私はずっとそうして彼に支えられたまま生きていくの?

 彼には彼の人生がある。

 由里子さんや匠さんは優しくても、院長である祖父は昔気質の厳しい人と話を耳にしたこともあるし、きっと子供を産まなければ文尚への風当たり強くなる。

 第一文くんのご両親だって、気遣いに溢れた人たちだけど、本心では孫に会いたいに決まってる。

 だったらやっぱり……どうなるかもわからない未来のために時間を費やすより、今のうちに合理的な選択をするのもひとつの方法じゃないのかな。

 だって、私たちの関係って勢いから始まったし……。
 私の片想いは別として、文くんなら後々、『そんなこともあったね』程度で済むかもしれない。

 一度距離が近づいた分、離れるのは本当は苦しい。

 でも、それが彼のためだって言うなら、私はなんでもできる気がする。