エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 以前、私が家を飛び出して文くんが迎えに来てくれた日から、私は文くんに言われて同じベッドで眠るようになった。

 私はいつも窓際側に横になる。だから今も、同じ場所に寝転がった。

 寝返りすれば、微かに文くんの匂いがする。
 ひだまりのような優しい香りに、私は堪えきれずに目尻から涙がこぼれ落ちた。

 今日、婦人科で検査を受けて発覚したのは、子宮筋腫と子宮内膜症。
 子宮には嚢胞もあるとのことで、これまでの生理に伴う痛みはそれらが原因だとわかっただけすっきりした。

 先生の話だと、今すぐ命に関わるというものではないみたいだし、内服薬を使って経過観察でもいいという説明だったから。

 けれど先生の話には続きがあって、子宮内膜症の治療方法のひとつとして、妊娠を望み、妊娠できる環境下にいるならば妊娠するのも一案だと勧められた。

 というのも、放っておけば加齢と病状の変化から、子どもを授かりにくくなるケースがあるらしい。

 なんの知識もない私にとって、青天の霹靂だった。

 急なことで混乱し、わかりやすく説明してくれていたはずなのに、自分にとってネガティブな言葉だけが心に残ってしまった。

 妊娠だなんて。ついこの間まで、ただの幼なじみだったのに。
 今では私を異性として好きだと言ってくれてるけれど、さすがにこの件に関しては急すぎる。

 薬物療法を選ぶにせよ早急に手術するにせよ、将来的に挙児希望しているのなら、常に不安が付き纏う。

 まだなにも始まっていない。けれども、絶対大丈夫とも言い切れないのだと思うと、俄然不安の方が大きい。

 そんな不安に駆られていたところに、東郷先生がなにげなく発した言葉がいっそう私の胸を抉った。

 文くんは代々続く天花寺総合病院の後継者。
 きっと……ううん。絶対、跡継ぎを求められる。私が原因で親族の期待に応えられなかったら、文くんは私と板挟みになって苦しむ。

 なにより、彼に私の病状を伝えて仮に子どもを考えようってなったとしても……もしも、思うような結果に結びつかなかったら? 時間は有限だもの。その間にも、私の身体はどんどん老いていくのが自然の摂理なわけで、確率は下がる一方なのはわかりきってる。

 頑張って、頑張って。望みをかけて、すべてを捧げて。
 それでも願いが叶わなかったら……? 私、心が壊れる想像しかできない。

 それに、東郷先生も言ってた。文くんは『真面目で努力家』だと。

 同僚の人にもそう思われて認められている彼の足を、私が引っ張るわけにはいかない。

 もっと、仕事に集中させてあげられる完璧な女性の方がきっと――。