エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 案内されたのは、同フロアの奥にあるブース。
 おしゃれなパーテーションで仕切られたひと区画に足を踏み入れ、ふたり掛けソファに腰を下ろす。

 すると、三十代くらいの綺麗な女性スタッフが、粛々と頭を下げた。

「本日はご来店ありがとうございます。ご予約を承りました際に、マリッジリングをお探しといただいておりましたがお間違いございませんか?」
「はい」

 スタッフの質問に文くんが答えた、

 改めて結婚指輪を見に来たのだと思うと、気恥ずかしい。
 私は終始手元を見つめ、タイミングを合わせて会釈する程度。

「もしなにかお探しの指輪のイメージなどございましたら、お聞かせ願えますでしょうか?」

 スタッフは今度、私に向かって質問を投げかけてきたのがわかり、僅かに顔を上げる。

「え……と、その、実はあまりよくわからなくて」
「左様でございますか。それでしたら、まずはご一緒に店内を回ってご覧いただくような形でよろしいですか?」
「は、はい。よろしくお願いします」

 私がペコッと頭を下げるとスタッフも会釈をし、とても柔らかく微笑んで「かしこまりました」と告げられた。

 彼女の笑顔と耳に心地いい話し方は、少しずつ私の緊張を解してくれる気がした。
 やはり有名なブランド店だけあって、やっぱり接客も素晴らしい。

 スタッフに促され、私たちは席を立って、先ほど通ってきたショーケースが並ぶフロアへ移動する。
 ショーケース内に目を落とすと、すべてがキラキラしていて感嘆の息が漏れる。

「なにか気になるものはある?」
「う……うーん。どこから見ていいのか色々ありすぎて……」

 ゆったりとした歩調でショーケースを眺め歩きながら文くんに問われるも、本当にどこからどう選べばいいかさっぱりだった。

 文くんが足を止めてショーケースに顔を近付ける。