午前中のうちに向かった先は銀座。
今日は文くんのプランに則ってショップを回る予定。
正直私はアクセサリーは普段あまりつけないし、ブランドなど特段こだわりはない。
とはいえ、そうそうないイベントではあるから、多少興味はある。
興味はあると言っても、素晴らしいジュエリーに対してではなく、普段利用しないようなハイブランドのショップに入店したり、商品を間近に見ながら一流の接客を受けるという経験ができることに対してだ。
結局のところ、ただ文くんと出かけられるだけでうれしいし、お揃いのものを選びに行くだけで楽しい。
だから、文くんは事前に『行きたい店はある?』と聞いてくれた時も、私は首を横に振ってしまった。
後から考えれば、一般的に女性の方が男性よりもジュエリー系に詳しいだろうし、〝どこでもいい〟みたいな反応をしてしまって、困らせたのではと不安が過った。
困る程度はまだマシで、人によっては指輪選びに前向きじゃないのかと不満を抱かせそう。
現状に満足してるせいで、気を抜きすぎだったかも……。男の人って、多少はわがまま言ったり、ちょっと強引に指揮権取ったりする方がいいのかな。
いやでも、文くんは怒ったりしないとは思うけど……。
頭ではあれこれ考えているくせに、行動には起こせない。
私は文くんの一歩後ろを歩くだけで精いっぱいだった。
「ミイ、こっち」
俯きがちだった私を声で誘導すると同時に、手を繋がれる。瞬間、私は顔が上がった。
「手、冷たいな」
「ご、ごめんなさい」
「謝るとこ? まあちゃんと前見て歩かないのは気を付けないと」
文くんの大きくて温かい手は、それからずっと繋がれたまま。
やっぱり私、指輪とかももちろんうれしいけれど、こうしている時間がなによりもうれしい。
そうして手を引かれるまま歩き、たどり着いたのは私でも知っているハイブランドの店だった。
「え? ここ?」
パリやロンドンを彷彿とさせるクラシカルなデザインの建物を前にして、私は圧倒された。
落ち着いたチョコレート色の外壁、オシャレなショーウインドウのディスプレイ。
重厚そうな大きな入り口前には、ドアマンが立っている。
今日は文くんのプランに則ってショップを回る予定。
正直私はアクセサリーは普段あまりつけないし、ブランドなど特段こだわりはない。
とはいえ、そうそうないイベントではあるから、多少興味はある。
興味はあると言っても、素晴らしいジュエリーに対してではなく、普段利用しないようなハイブランドのショップに入店したり、商品を間近に見ながら一流の接客を受けるという経験ができることに対してだ。
結局のところ、ただ文くんと出かけられるだけでうれしいし、お揃いのものを選びに行くだけで楽しい。
だから、文くんは事前に『行きたい店はある?』と聞いてくれた時も、私は首を横に振ってしまった。
後から考えれば、一般的に女性の方が男性よりもジュエリー系に詳しいだろうし、〝どこでもいい〟みたいな反応をしてしまって、困らせたのではと不安が過った。
困る程度はまだマシで、人によっては指輪選びに前向きじゃないのかと不満を抱かせそう。
現状に満足してるせいで、気を抜きすぎだったかも……。男の人って、多少はわがまま言ったり、ちょっと強引に指揮権取ったりする方がいいのかな。
いやでも、文くんは怒ったりしないとは思うけど……。
頭ではあれこれ考えているくせに、行動には起こせない。
私は文くんの一歩後ろを歩くだけで精いっぱいだった。
「ミイ、こっち」
俯きがちだった私を声で誘導すると同時に、手を繋がれる。瞬間、私は顔が上がった。
「手、冷たいな」
「ご、ごめんなさい」
「謝るとこ? まあちゃんと前見て歩かないのは気を付けないと」
文くんの大きくて温かい手は、それからずっと繋がれたまま。
やっぱり私、指輪とかももちろんうれしいけれど、こうしている時間がなによりもうれしい。
そうして手を引かれるまま歩き、たどり着いたのは私でも知っているハイブランドの店だった。
「え? ここ?」
パリやロンドンを彷彿とさせるクラシカルなデザインの建物を前にして、私は圧倒された。
落ち着いたチョコレート色の外壁、オシャレなショーウインドウのディスプレイ。
重厚そうな大きな入り口前には、ドアマンが立っている。



