エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 三日後。今日は土曜日。
 私は朝起きて、アドベントカレンダーの十七の引き出しをそっと開ける。

「キャンディだ。可愛い~」

 星型のキャンディには、クリスマスのステッキやブーツが描かれている。

「おはよう」
「あ、おはよう」

 振り返ると寝起きの文くん。
 彼はおもむろに私に歩み寄り、手の中を覗き込んだ。

「今日はキャンディ? ふと思ったけど毎日甘いお菓子、飽きない? コスメとかもあるからそっちにすればよかったかな」
「ううん。こういうささやかなものの方がほっこりできるし。それに量が多いわけじゃないから全然飽きないよ~。お菓子大好き。どうしよう。私、ハマりそう」

 アドベントカレンダーの存在はなんとなく知ってはいたけれど、買ったことはなかったから。大人になってもこんなに楽しいだなんて。

 文くんはクスリと笑う。

「じゃ、また来年もプレゼントするよ」
「……やった」

 またアドベントカレンダーをプレゼントしてくれることだけじゃなくて、当たり前に来年の約束を口にしてくれたという方が喜びが大きい。

「今日は昼前には出ようか?」
「うん。朝ご飯準備するね」
「着替えてくるから待ってて。俺も一緒に準備する」

 こういうなにげない日常がなによりも幸せなんだって、今初めて感じる。
 この穏やかな日々が明日も明後日も、その先も……。

 私はキャンディを見つめて自然とそう願っていた。