エリート脳外科医は契約妻を甘く溶かしてじっくり攻める

 これ以上心配は掛けたくないからと、彼に言われるままソファに座って待っていると、ブランケットを持って戻ってきた。

「身体を冷やすとよくないから」

 そうして、文くんは私の膝元に丁寧に掛けてくれる。
 私は丁重に扱われるのがなんだかくすぐったくて、ついクスッと笑ってしまった。

「どうもありがとう。なんか本当に文くんの患者になったみたい」
「笑える元気があるならとりあえず大丈夫かな」
「ふふ。うん。心配させてごめんなさい」
「いいよ。だって俺、ミイの主治医なんだろう?」

 スッと手を取られ、微笑みを向けられた。
 小さい時に言ったわがままを大人になった今もすんなり受け入れられて、どんな顔をしていいかわからない。

 申し訳ない気持ちと、恥ずかしい気持ち。うれしい気持ちが混ざってる。

「ミイ、コーヒーじゃなくてホットミルクとかいいんじゃない? 待ってて」

 文くんはキッチンへ向かい、ホットミルクを作りながらさっき汚したシンクを片付けてくれていた。

 少しして、ホットミルクと冷めたコーヒーを持ってソファへやってくる。

「ごめんね。文くんのコーヒー冷めちゃったよね」

 私はホットミルクの入った新しいカップを受け取りながら、しゅんと肩を窄めた。

「でもこのカップ、冷めづらいんじゃなかった?」

 ゆっくり隣に腰を下ろした文くんは、さっき私が淹れたコーヒーをひと口含む。

「ん、やっぱり美味しい。ミイのコーヒーに慣れたせいか、俺、最近医局のコーヒーが物足りなくなってる」
「えー? もう。そんなお世辞はいいのに」

 おべっかとわかっていても気分は悪くない。

 私はカップの中に息を吹きかけ、そっと口を付ける。
 少し砂糖を入れてくれたのか、ほんのり甘くて心が落ち着く。

「来週はクリスマスか……。一年あっという間だな」
「そうだね」