「すみません」
さすがに見慣れてきた天井を眺めながら謝ると、ベッドの傍に置いてある椅子に座っている蓮見さんが立ちあがったのが視界の隅でわかった。
本来、寝室に椅子は置いていない。書斎かどこかから持ってきたのだろう。
寝入る前にはなかったので私が眠っている間に移動させてきたのはたしかなのに、物音に気付きもしなかった。
熟睡していたらしい。
「今、何時ですか?」
「朝の九時過ぎだ。体調はまだ悪そうだな。顔色がよくない」
寝室のカーテンは引かれていて室内は薄暗い。
睡眠の妨げにならないように配慮してくれてだろうけれど、体が弱っていると暗闇に不安を覚えるのは昔からだった。
「カーテン、開けてもらってもいいですか?」
「ああ。眩しく思ったら言え。今日は快晴だ」
「そうなんですね」
蓮見さんがカーテンを開けた途端、まばゆい光が室内を明るく照らした。十月の太陽はそこまで主張しないので、レースのカーテン越しに受ける分には心地いい。
「せっかくお出かけ日和だったのにすみません。家具を見に行く約束をしてたのに」
私はもともと今日、水曜日は定休だけれど、蓮見さんは違う。
わざわざ仕事の都合をつけて有休をとってくれたのに……と思い謝ると、「気にしなくていい」と真顔で言われた。



