「え……いたずらだったってこと?」
「どうかな。でも、住所も電話番号も嘘ってなると、その可能性はある。単純にハウスメーカーの営業が家に来るのが嫌だからって理由かもしれないけど」
「アンケート、強くお願いしすぎちゃったかな……。断り切れなくて、仕方なく嘘の情報書いたのかも」

だとしたら本当に申し訳ないことをした。

女性ひとりで顔を出すのだって勇気がいったかもしれないのに、更に追い詰めてしまっただろうか。
反省していると、白崎が肩をポンとたたく。

「考えすぎだって。それに、アンケートは任意だしあの時はそこまで強く言ってなかった。宮澤は断りやすい雰囲気作ってたし、気にするなって。それより、今夜の嫌がらせメニューは決まったのか?」

私を励まそうとしてくれている笑顔だった。
それがわかったから、私も笑って答える。

「ポトフとサンドイッチ」

今日は明日の朝食用のパンを忘れないようにしなければ、と強く頭にインプットした。



十月第二週目の火曜日。帰宅する足取りは重たかった。
でもそれは、今日色々忙しかったからで、最近ちょっと嫌なこともあったからだと思っていた。

日々の中で、ある出来事のせいで心の中にゴロッとした大きめの不快感が生まれ、ため息を何度ついても逃がしきれず、お風呂にゆっくり入っても溶けてくれず、わだかまりとして残ってしまうことは普通にある。

これまで生きてきた二十四年間の中でも何度も経験してきたし、これは時間が解決してくれるとも知っていた。

だからずっとちょっと苦しかったけれど放っておくことしかできなくて……それがきっかけとなったのかもしれなかった。