「ああ。それがどうかしたか」
「その、ふたりで暮らしている部屋なのに全部が蓮見さんの選んだものってなんとなく嫌だなって。これだと、私はただ蓮見さんの部屋に寝泊まりしているだけという感じが否めないというか」

嘘だった。
正直蓮見さんの部屋は私の趣味にも合っている。

ダイニングテーブルもソファもラグも、カーテンでさえもひと目見て素敵だなと思ったし、不要なものを置いていないシンプルな部屋は好みでしかない。

普段、仕事でモデルハウスにいる時間が長いので、間取りに合わせてインテリアや家具の置き場所は色々考える機会が多いぶん、好みにはうるさい方だと自覚がある。

そんな私が見た途端気に入り、毎日部屋を見渡して気分を上げているのだから蓮見さんの部屋は私のセンスにドンピシャだ。

家具の色合い、ラグの毛足の長さ。レースのカーテンの薄さや柄まで。

シンプルながらきっと蓮見さんもこだわってこの部屋を作り上げたのだと思う。
そこに口出しをされたり好みではない家具を置かれるのは我慢ならないはず。

早い話が、手料理地獄に続く、第二弾の嫌がらせだ。

別に却下されて構わない。蓮見さんが、今後この部屋に手を加えられるかもしれない可能性に気付き少しでも私の存在を煩わしく感じてくれたら成功だ。

意外と広い心のせいで許可が下りた場合は、申し訳ないけれどこの部屋にはそぐわないインテリアを置かせてもらう。

毎日それを見るたびにじわじわと嫌悪感が溜まっていってくれればそれもよし。

若干の心苦しさを感じながらも蓮見さんの反応をうかがっていると、彼は私を見て少し考えたあとタブレットを手に取った。