キッチンに積みあがっている箱を眺め苦笑いをこぼす。
毎日賞味期限の短いものから食べていっても、二ヵ月はおやつに困らなそうだ。
ほうじ茶の香りが優しく包むリビング。
隣に座る蓮見さんをチラッと見ながら口を開く。
「参考までに教えてほしいんですけど。蓮見さんって過去の恋愛はどんな感じだったんですか?」
プライベートに突っ込んだ質問は嫌がられるかもしれないと思ったけれど、意外にも蓮見さんは嫌な顔はしなかった。
「別にこれといって面白いものはない」
「真剣なお付き合いはしてこなかったってことですか?」
「そういうわけでもない。付き合っている相手がいる間は他の女性と関係を持ったことはないし気持ちが浮ついたこともない。誠実には向き合ってきた。ただ、圧倒的な熱量の違いはあったかもしれない」
自然と「なるほど」と声が出るくらいには納得していた。
蓮見さんの様子を見る限り、相手の女性の熱の方が相当高かったんだろう。
そして好きだからこそ感情的にもなるのに、一方の蓮見さんは事務的な対応を淡々と無表情でこなすだけ……という状況が目に浮かぶようだった。
「可哀相に……」
それは元カノさんたちに向けた言葉だったけれど、勘違いした蓮見さんはやや不満そうな顔を私に向けた。
「同情されるようなものじゃない。俺のことより春乃がどうだったのかを教えろ。今度は嘘はなしだ」
暗に、昨晩の経験値についての虚偽の申告を言われているのだと気付き、目を逸らす。
見栄を張ったところで仕方ないともう知っているので、素直に過去の恋愛を思い浮かべる。
五回の恋愛。五回の失恋。
最後の三回はそれぞれとても短い期間で終わったので、思い出らしい思い出すら存在しなくて苦笑いがもれた。



