「でも、掃除全部はさすがに無理かも……」
フローリングは掃除できても、細かい部分まではきっと無理だ。だって家でもやったことがないのだから、どこをどれくらいまで突っ込んで掃除すればいいのかがわからない。
なので、掃除だけはハウスキーパーをお願いしたいと蓮見さんに伝えるべきかなぁと思いながら、ゴウンゴウンと音を立てて動き出した洗濯機から目を放し、リビングに向かった。
そして、キッチンでケトルにお湯をセットする。
この半月で、お風呂上りのティータイムがすっかり定着していた。
先にお風呂を済ませた蓮見さんがソファに座っていたので、少し迷ってから私も同じソファの一メートルほど距離を空けた場所に腰を下ろす。
別に、夕食時の蓮見さんの微笑みを見て以降、ちょっと胸がむずむずしているからではなく、単純に攻略するためだ。
婚約解消を蓮見さんの口から引き出すには、もっと彼自身のことを知る必要があると考えたからだ。
蓮見さんの前には、綺麗なグラスが置かれていて、中には氷とべっ甲色のお酒が入っている。
うっかりベロベロに酔って自ら弱点を語りだしてくれないかな、と思いながら見ていると、隣に座ってきておきながら何も言わない私を不思議に思ったのか、蓮見さんがこちらを向いた。
「飲むか?」
「いえ、大丈夫です。甘いカクテル以外はあまり好きじゃないので」
泣き上戸だとは言わずに答える。



