「ロールキャベツを作るの、初めても同然だったんです。何度も味見したけど、おいしいかどうか正直不安で……だから、おいしいって言ってもらえてすごくホッとしたというか」
聞こえないほどの小声で「嬉しいというか」とごにょごにょ言う。
蓮見さんはそんな私を黙って見ていたけれど、そのうちにふっと笑みをこぼした。
「嬉しいなら嬉しそうな顔で言え」
穏やかで優しい微笑みに目を見張る。
こういう柔らかい笑顔を見るのは初めてだったので、食べるのも忘れ、しばらく見入ってしまった。
食器は食洗器に任せ、お風呂を済ませる。
使ったタオルを放り込んだ洗濯機を洗濯乾燥モードでセットした。乾燥機NGの服や下着は、明日まとめて洗って浴室乾燥にかけることにする。
液体洗剤と柔軟剤を入れしばらくすると、機内に水が注ぎこまれる。
正直、洗濯機はこの同居を始めるまでほとんど触ったことがなかったため、ネットで取扱説明書を検索して画面とにらめっこしながら覚えた。
地図から洗濯機まで、ネット様様だ。
蓮見さんは私が来る前はずっとハウスキーパーを頼んでいたという話だけれど、やっぱりできる限りは自分でしたい。
それは、過去の経験から、できないと訴えたら〝お嬢様だから〟とあざけわらうような眼差しが返ってくることを知っているからかもしれない。



